安いだけが集客商品ではない

私がまだペーペーのパソコン販売員だった頃、上司に「この商品を扱いたい」と提案したことがあります。

それに対する上司の答えが「そんな高い商品売れない」。

上司の言うことはもっともなんです。

私が「扱いたい」と提案したのは、日本で最初に発売された16ビットパソコンで73万円。

私がいたパソコン売場は、オープンして3ヶ月、22万8千円の8ビットパソコンすらまだ1台も売ることができていませんでした。

そんな状況を考えれば73万円のパソコンが売れるとは、提案した私でさえ思っていません。

ただ、私は見たかったのです。16ビットパソコンがどんなモノか、見て触って確かめたかったのです。

もちろん、個人的な興味・の・み・で扱いたいと提案したわけではありません。

パソコンがなんなのかもよくわかっていない私でさえ、16ビットパソコンがどんなモノか「取り敢えず見てみたい」と思うのです。パソコンマニアはもっとそうした欲求が強いだろうと考えました。

つまり、73万円の16ビットパソコンを扱えば、見て触りたいパソコンマニアが売場に来るだろうと、ペーペーなりに考えたわけです。

そのパソコン売場はオープンしたばかり。社長の鶴の一声で慌てて作った売場なので、まったく宣伝もしていませんでした。宣伝しなければお客も来ません。

とにかく、私(たち)はお客を必要としていました。

安くしてお客を集めるという電気屋得意の方法は使えません。と言うのも、当時まだパソコンは誕生したばかり。お客の数が少ないので、安売りしても効率が悪すぎるのです。

残る手は一つ、買う買わないは別にして、お客が見たい商品を扱うしかないだろうと考えたわけです。

この考え方はオーディオ売場からパクりました。オーディオには数百万円する商品がいくつもあって、「こんなの売れるんですか?」と質問して返ってきた答えがコレだったのです。

あなたの店は、売れる売れないは別にして、お客が見たい商品、触りたい商品を扱っていますか?

「高いから売れない」?

その通りかもしれません。

しかし、見たいお客、触りたいお客がいるなら、お客を集めるために扱う価値はあると思います。

もし、こうした商品を扱っていないとしたら、お客があなたの店に来る理由は何があるのでしょうか?

特売だけなら先は見えていますよね。

集客商品とは、安い商品だけではないのです。お客が見たい商品、触りたい商品も集客商品なのです。

ちなみに私の提案は、直後にヒット商品が登場したおかげで必要なくなりました。

     小宮秀一   
  コラム   

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