ああ言えばこう言う

「セールスマンの社会的地位はホームレスより下」とは私の先輩の言葉です。「ホームレスはウソをつかないがセールスマンは違う」からだとか。

事実はどうかと思いますが、何か売り込もうとする人間に対する感情を見事に言い当てています。

あなたは商売でウソをついたことはないですか?

店の関係者でそう思う人、実は多いんですが間違っています。なぜなら、ウソを付かずに商売はできないからです。

たとえば、同じ機能のマウスで白と黒の2つの商品があるとき。お客様が迷っていたらどちらを勧めるでしょうか?

おそらく、100人中100人が黒を勧めるのではないでしょうか?

白は汚れが目立ち、手入れが大変だからです。

しかし、黒のマウスが品切れだったらどうでしょうか?

それでも黒のマウスを勧めますか?

「他店に在庫を問い合わせて、在庫のある店で買ってもらう」と答えた若いセールスマンがいました。

真の顧客第一と言える素晴らしいサービス精神です。

しかし、お客様は他店まで足を運ばなければなりません。そこで、売場を探し、商品を探し、レジに持っていかなければならないのです。

お客様にそこまで手間をかけさせるのは親切なのか?とも言えるのです。

と言うのも、お客様は迷ってはいるけれど、どうしても黒がほしいわけではないのです。

そんなときは、白いマウスのいい所を説明する方がいいのではないでしょうか?

経済的に余裕のありそうな人なら「白は確かに汚れやすいんですが、だからこそ、白は豊かさの象徴と言われるんですよ」。

上品な女性なら「白いマウスがいつでも真っ白だと見た人はどう思うでしょうか。手入れが行き届いているな、細かい気遣いができる人だなと思うでしょう」。

子供に使わせる親御さんなら「マウスは毎日使うものですから、白いマウスなら、埃をかぶらないようにカバーをかけたり、手を洗ってから使うようにしたりと、丁寧な扱いができるようになりますよ」。

こうした言い回し、私たちは「モノは言いよう」とか、「すべてのことには表と裏がある」とか、「視点が変われば長所も短所になり、短所も長所になる」とか言いますが、ただの言い訳です。

世間一般ではこういうのを「ああ言えばこういう」とか「ウソ」と言われるんです。

売り込むとは、こういう偏見(?)とネガティブな感情を乗り越えなければならないのです。

だからこそ、誠実であろうとする努力が大事なんでしょうね。

     小宮秀一   
  コラム   

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