神田昌典先生の連載より
円安や世界的なインフレ傾向により、商品原価が大幅に上昇している。
企業努力も限界に達し、商品・サービスの値上げを考えている企業は多いだろう。しかし、値上げをすれば、一気に顧客が流出しかねない。
それを恐れて、値上げをちゅうちょしている企業もまた多いのではないか。私が監訳した『ストックセールス 顧客が雪だるま式に増えていく「4つのメッセージモデル」』
(エリック・ピーターソンら著)によれば、値上げを伝える際に「大いに自信がある」企業は
たった8%しかなかったという。同書は、値上げが受け入れられやすくなるお客様へのメッセージの伝え方を紹介している。
値上げする際に使うメッセージモデルを共有しよう。まずメッセージモデルとは、目的を達成するために最適化された文章パターンのことである。
発信者が「何を」「どの順番で」伝えるかによって、受信者の行動に変化を与えることが分かっている。同書では、ウォーリック・ビジネス・スクールのニック・リー博士の協力のもと、
「値上げを伝える時、どのメッセージモデルを使うとどんな結果が出るか」をテストした。たとえば次のモデルだ。
A見落とされていたニーズ
「お客様にはこういうニーズがありますが、まだ満たされていないですよね。
だから追加のサービスが必要なので、値上げします(もしくは新しい商品をご購入ください)」B新機能と機能改善
「機能改善をしたので値上げします」C外部要因によるコスト増
「円安で原材料の輸入価格が上がったから、値段を上げざるを得ません」D現状維持バイアスの強化
「長期的な取引関係があるのだから、値上げを受け入れてください」このうち、最もお客様が他社に流出したのはAだ。
他のシナリオと比べて16.3%も流出した。反対に最も流出が少なかったのは、Dだ。
具体的には次の順番で値上げを説明すると、最も受け入れられやすいことが分かった。1実績を報告
「取引を始めてから、お約束した実績が上がりつつありますね」2購入時の意思決定プロセスを振り返る
「取引が始まった時、詳細な検討を重ねた結果、私どものサービスを選ばれました」3変化には、リスクがあり、コストがかかる
「別のサービスを再検討することで計画が遅れるリスクがあります。
他のサービスを導入して不具合が生じた場合、コストもかかります」4サービスの進化を説明
「私どものサービスは、当初よりも大幅に進化しているので、当初以上の利益をもたらすようになりました」5新価格の説明後に、ロイヤルカスタマー割引をする
「長年ご愛顧いただいていますので、特別に割引させていただきます」このように伝え方を変えると、さらに信頼性の高い取引を拡大する方向に向かえるのである。
https://www.kandamasanori.com/media/15183/
値上げをして利益を確保し、長期的に人件費をあげていく方向が、今後の正しい経営のかじ取りといえる。