【セクション4】なぜ、何がいくつ売れているかが必要なのか?

何がいくつ売れているかを知ることを単品管理と言います。POSシステムが入っている店の場合、当たり前すぎて「単品管理」という言葉自体を知らないかもしれませんね。

単品管理とは商品をアイテム単位、SKU単位で管理することです。

ちなみに、単品管理の反対語はどんぶり勘定ではなく、分類別管理です。分類別管理とは、たとえば食品スーパーなら、青果、肉、魚、惣菜と言った商品の分類ごとに管理することです。

もし、あなたの店が分類別管理なら、それが売れない理由かもしれません。なぜなら、分類別管理では、お客様のニーズ・ウォンツがわからないからです。

商売の成功の秘訣は、人によっていろいろあるかもしれません。それでも、お客様のニーズ・ウォンツに応えることを挙げない人はいないでしょう。

お客様のニーズ・ウォンツを知るにはどうしたらいいのでしょうか? お客様にどんな商品がほしいか聞きますか?

ま、普通、聞かないですよね。なぜなら、お客様は自分が何をほしいのか、普段考えていないからです。私たちが考えるほど、お客様は商品に興味がないわけで。

集まったとしても、「もっと」という、役に立たないニーズ・ウォンツばかりです。「もっと」とは、「もっと安く」とか、「もっと小さく」とか、あるいは「もっといろいろできるように」とか言う、ニーズ・ウォンツのことです。「もっと」なんて作り手全員が考えています。お客様に言われなくても「わかってる!」ってことです。

そんなわけで、お客様に「どんな商品がほしいですか?」と聞くのは徒労に終わります。

ただ、私たちの店にはお客様が買いに来ているわけです。つまり、お客様が買った商品こそ、ニーズ・ウォンツを満たす商品と言えるのです。

ニーズ・ウォンツを満たす商品を知るにはどうしたらいいのでしょうか? 分類別管理でいいでしょうか? たとえば、鮭と鯖は鮮魚と言う分類で管理すればいいのでしょうか?

違いますよね。鮭と鯖はそれぞれ異なるニーズ・ウォンツがあります。鮭と鯖は別々に管理しなければならないのです。また、同じ鮭でも刺身と切り身では違う商品です。提供の仕方の違いにもニーズ・ウォンツが反映されるわけです。

だから、商品をアイテム単位、SKU単位で管理する、単品管理が必要なのです。「単品管理しない」と言うことは、「お客様のニーズ・ウォンツに応える気がない」と言うことなのです。

もし、あなたのお店が単品管理をしていないなら、今スグ単品管理を始めてください。

POSがなかったので…

何がいくつ売れているか、わからない? そんなのあり得ない?

驚く人もいるかもしれません。しかし、小規模の店では、何が売れているか、わからないまま商売している店が多いのは事実です。

恥ずかしながら私も、自分の店で何が売れているのか、わからない時期がありました。

私が店長になったとき、会社はまだPOSシステムを導入していませんでした。そのため、開店から1~2ヶ月は、何がいくつ売れているのか全くわかりませんでした。

基準となる数値がないため、どんぶり勘定で発注していました。そうしたら在庫が膨れ上がりました。月2億円の売上で、5億円の在庫を抱えてしまいました。

このままでは店長を降ろされると危機感を感じました。それでようやく私は、何がいくつ売れているのかを把握しようと考えたのです。

POSシステムがない以上、手作業でやるしかありません。アイテム数は5万アイテム。全部の売上を把握することは不可能です。最初から諦めました。

対象は保証書のある商品だけにしました。保証書のある商品は高額商品だからです。

パートのおばちゃんに保証書の控えを集計してもらいました。そして3ヶ月目にして、ようやく、何がいくつ売れているか、わかるようになったのです。

POSがなくても単品管理はできる

私がやった方法ならPOSシステムがなくても単品管理はできます。つまり、「全部がわからなくても仕方がない」と割り切ることです。

POSシステムがなくてもレジスターは使っているはずです。レジスターはカテゴリー別に売上を集計できます。単品の売上はわからなくても、カテゴリー毎の売上はわかります。

まずは、売上構成比の大きいカテゴリーの単品管理から始めればいいでしょう。そのためには、タグを付けるとか、保証書を発行するとか、方法はいろいろあります。

今、POSシステムは安く導入できます。こうした面倒がイヤなら導入をお勧めします。

ただ、手作業の単品管理を知らない店がPOSシステムを導入すると、必ず「面倒」という声が上がります。確かに、POSシステムを運用するのは面倒です。

しかし、手作業の手間と比べたらはるかに楽です。POSシステムを導入する時にはこの辺りの教育が必要です。

もっとも、教育するより手作業での単品管理を始める方が早いかもしれませんね。